広報ましき 特集 そろばんの効用 まだまだ現役 今も変わらぬ計算機 平成24年8月号から |
パチパチと軽やかな音を響かせる昔ながらの計算機「そろばん」。
単に計算力を伸ばす道具と思われがちですが、それだけではありません。どんな習い事にも必要な学ぶ基礎を育む手段として今もなおあらゆる学びの場に取り入れられています。年齢を問わず最初の習い事にはぴったりのそろばん。今回はその効用にスポットをあててみました。
意外と知らない、そろばん学習の効果
◇数の仕組みが理解できる 子どもが数字を習い始めのころ、28を書くのに208(にじゅうはち)と書くことがあります。これは数字を書き表すときに「位取り」のしくみを理解していないからです。数を具体的に玉で表すことで、幼児にもわかりやすく、位取りや10進数の理解につながります。 ◇計算の道筋がわかる 電卓はキーを押すだけで答えが出てくるので、計算の道筋が分からず、計算力は身につきません。しかし、そろばんでは、例えば「7に8をたすと10繰り上がり15になる」という筋道の立った思考を通して、計算力が身につきます。 計算力が身につくと、桁の大きな数、小数の計算へと発展させ、いろいろな場面で正しく速い計算処理ができるようになります。 ◇今期と集中力、チャレンジ精神を養う 今、子どもは「集中力がない」「ねばりがない」と言われる反面、興味のあるものには関心と執着を示します。そろばんの学習は、精神を集中しなければならず、計算中は一言もしゃべらず無心に一つのことに打ち込むため、大切な集中力、今期が養われます。また、より難しいものに挑戦するチャレンジ精神も養われます。 ◇高齢者の脳が元気に 脳の若さを保つことはもちろん、1日に数十分の練習で認知症の症状が改善されたという研究報告もあります。指先の細かい動きと目・脳の働きを連動させるそろばんは、認知症の予防にもつながります。 ◇脳を活性化します。 目や耳から情報が与えられ、その情報を正確に指先で動かす。それを繰り返す。この動作は、非常にレベルの高い集中力が必要となり、結果として左の脳を鍛えることに役立ちます。また、独創的なアイデアや創造的な考えには、右脳の働きが深く関係していると言われています。そろばん式暗算は、そろばんの玉を頭の中に浮かべて、玉を動かします。それには右脳の協力が必要となります。特に人間の成長には、左右脳のバランスのとれた発達が望ましいとされています。 |
できたときの喜びをみんなで共感できる場に
益城町放課後子ども教室コーディネーター 中川 有紀
簡単な計算をすること、声を出して本を読むこと、いろんな人と会話をすることは、子どもからお年寄りまで脳の働きをよくするといわれています。中でもそろばんは、指先の運動を伴うため、脳の活性化に非常に有効といわれています。 そろばんは、「1玉」と「5玉」を組み合わせた計算機です。電卓やパソコンと違って、5や10の合成分解を考えながら玉を入れて、計算します。ですから計算力が身につきます。また、数を正確に聞き取ったり、数字を読み取ったりしてそろばんに入れなければなりません。このため集中力を高める効果があります。 そろばんは、小学3年生の算数で始めて学習します。そのそろばん学習を公民館講座受講生がお手伝いします。先生が、そろばんの各部位の名称、数の読み方、数の入れ方、1玉や5玉の指づかい、計算の仕方を指導された後の習熟の時間が私たちボランティアの出番です。 親指だけではじく子、人さし指だけを使う子、親指で入れるか人さし指で入れるかを悩んでいる子、5玉と1玉の意味がよく分からない子などさまざまです。そんな子どもたちに先生と協働して丁寧に教えていきます。 また、5玉が下りているときの足し算がなかなか理解できません。例えば、「5+8」の計算では、「8に2をたすと10となるから、5から2を取り残った3を入れて、5を払って10上げ、答は13」と説明すると、「わかった」と言って同じような問題に挑戦します。できたとき、「よくできたよ」と頭をなで褒めてやると笑顔が返ってきます。 飯野、津森小学校では、放課後子ども教室でそれぞれ30人くらいの子どもたちがそろばんの学習をしています。益城中央小は、公民館木山分館の分館活動の一環として30人くらいが習っています。放課後子ども教室でのそろばん学習支援でも、公民館講座受講生20人が指導に当たっています。 公民館講座では、「そろばんで1日1回頭の体操、子どもとともにがんばろう」を合い言葉にそろばん学習に励んでいます。 子どもも大人も一緒ですが、できなかったことができるようになる喜びがそろばん学習のメリットの一つです。また、そろばん学習は、「目標を決め、その目標に向かって努力すれば必ず実を結ぶ」「私にもできる」を実感できる学習です。この実感を一つ一つ積み重ねることで、これからの生活で最も大切な自尊感情が育まれます。 そろばん学習を通して頭の体操と生きがいを共有する人が、一人でも二人でも増えることを願っています。 「そろばんは難しい」と考えず、気軽に挑戦しませんか。 |
聞いてみました そろばん学習の楽しさ
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そろばんの歴史
そろばんの歴史は古く、起源はメソポタミア時代(紀元前3000年代)といわれています。その頃は粘土板に線や記号で数字を表していたそうです。 ギリシャ・ローマ時代には、計算するために数を実際に表す小石が使われていました。その小石を並べるテーブルのことがそろばん(アバカス)と呼ばれていました。 日本にそろばんが伝わったのは、室町時代に入り通商取引のために中国商人によって伝えられたのが最初と言われています。 当時のそろばんは5玉が2つ、1玉が5つありました。中国では今もこの形のものが使われているそうです。 日本に伝来してからは、5玉が1つ、1玉が5つの「5つ玉そろばん」へ移行していきました。昭和に入ると、1玉も1つ減り、現在の形になりました。 |
見つめ直されるそろばん教育
パソコンや電卓がなかった時代にそろばんは、日々の経済活動を営むうえで必要不可欠な“計算機” として生活の中に浸透していました。 さまざまな形で人々の暮らしを支えてきたそろばんが、今また、学校や地域、家庭で見つめ直されています。 そろばんを学習することは、単に計算力・集中力を養うだけでなく、脳の働きを活発にすることが、科学的に立証されてきました。 さらには町内の小学校や公民館で開かれている教室では、そろばんを通じて世代を超えた関わりも生まれています。 皆さんの家にも、家族の誰かが使っていたそろばんがどこかに眠っていませんか。もし見つかったら、目の前において、懐かしい感触を思い出してみてはいかがでしょうか時代を超えて活躍するそろばんは、今でもきっと“現役”のはずです。 |